コロナ禍でデジタル化が一気に加速したこともあり、多くの企業がDX推進を目指してプロダクトを開発している中、エンジニアとビジネスサイドの間にある課題は根深く残っている。本来であれば、協力しあうことで社会に新たな価値を提供できたであろうプロダクトが、お互いの理解が足りていなかったためにクローズに追い込まれるケースも少なくない。そんな両者の架け橋として、CTOのスキルや知見を提供することで組織の課題を解決しているのが、大芝義信さん率いる株式会社グロースウェルである。今回は、同社が提供している、企業の課題解決を支援する「スポットCTO」の魅力や特徴について、大芝さんにお伺いした。
クチコミで利用者数が増加。副業からスタートしたサービスをきっかけに起業
CTOが退職した企業の顧問に就任。メンバーからの信頼を得て成果を出す
—【聞き手:松嶋、以下:松嶋】「スポットCTO」は、どのようなきっかけで生まれたものなのでしょうか?
—【話し手:大芝義信氏、以下:大芝】起業前のサラリーマン時代に副業としてアドバイザーや顧問をしていたことがきっかけです。一つの企業から得られる知見は1社分ですが、複数の企業に所属すればさまざまな経験ができるので、ナレッジも蓄えていける。関わる企業の数が多ければ多いほど、自分のマネジメント力も向上できると思い、当時務めていた会社に副業をしたいとお願いしていました。
—【松嶋】とはいえ、オファーがなければ複数の企業に関わることはできないと思うのですが、最初はどのような形で副業がスタートしたのでしょう?
—【大芝】最初は知人の紹介で、100名ほどの社員を抱える企業(以下:A社)のアドバイザーをして欲しいという話があったんです。CTOが退職したため代理をしてほしいという依頼だったのですが、代表と話していると「大芝さんはビジネスサイドのことも理解されているようなので、企業のビジョンやプロダクトも含めて見てほしい」と言われまして。A社には7つの開発チームがあったので、ひとまず各チームのリーダーと話すことになりました。
実際に7名のチームリーダーと対面した時、最初はこちらに対して警戒心があったようでしたが、彼らからの質問に対して一つひとつロジカルに答えていくことで最後は認めてくれたのか、協力的な姿勢に変わってくれました。チームリーダーの方々が私にアドバイスを求めている姿をみて、代表も「これならやっていける」と感じてくれたようで、結果として1年の契約を結んでいただけたんです。
─【松嶋】A社に対しては、どのようなことをされていたんですか?
—【大芝】技術選定や必要な知識の共有、スケジュール管理、マネジメントなど、リーダーの方々からあがってきた業務課題に対して、1on1のMTGで個別相談に乗ったり、定例MTGなどの場でアドバイスをしたりしていました。頻度でいうと月に1~2回ほどですね。最終的にはとても満足してもらえました。
クチコミでクライアントが増加。更なるステップアップを目指し、グロースウェルを創業
─【松嶋】A社以外にも、複数社関わっていらっしゃったんですよね?
—【大芝】はい。中でも印象的なものでいうと、某大手企業のCTOに新しく就任した方のアドバイザーをしたことでしょうか。それは対企業ではなく個人レベルで対応していて、評価制度の設計や他社事例のシェアなどをしていました。また、とある企業の立ち上げをサポートする経営コンサルティングも行っていましたね。
活動を続ける中で、MBAで学んだことや現場で経験してきたことは、他の企業にも通用するんだと実感できました。
─【松嶋】起業するきっかけは何だったのでしょう?
—【大芝】有り難いことにクチコミでたくさんの依頼が来るようになり、関わる企業数がどんどん増えていったので、副業を始めてから2年後の2016年に起業することにしました。社名の「グロースウェル」には、“シンプルに成長は良いこと。自社を成長させることで、関わる企業様の成長につなげていきたい”という思いを込めています。
CTOや企業が抱える課題に寄り添い、解決に導く
誰にも相談できない…多忙なCTOの伴奏者となる
─【松嶋】「スポットCTO」では、具体的にはどういった課題を解決できるのでしょうか?
—【大芝】マネジメントに苦労されているCTO、VPoE、マネージャーの相談相手となることができます。ミドルマネジメントクラスになると、相談する相手がいないという悩みを持っている方が多く、CTOの方は特にその傾向が強い。日本のCTOはCIOとしての役割も任されているケースが珍しくないですし、組織を作って運用することに加えて技術面でも責任を持つというのは、とても難易度が高いことなんです。また、エンジニアではない方にエンジニアの気持ちを完全に理解してもらうことは難しいので、社内の誰にも相談できないという悩みを抱えているCTOも多く存在しています。
─【松嶋】社内で悩みを相談できたり、アドバイスをくれたりする相手がいないというのは、精神的にも負担が大きいですよね。
—【大芝】はい。場合によっては、他社のCTOや近い職種の方に相談することもできるかもしれませんが、社外の人には話せないことの方が多いですし、本当に解決するためには、十分な時間を確保して問題解決にコミットする気持ちで望む必要があります。しかし、現実にはそういった時間を確保することは難しく、一人で粛々と対応されている方が多い。
そうなると、能力があるからこそCTOを任されているのに、本来持っているスキルを発揮する前に心が折れてしまうというケースもあり得ると思うんです。技術があるエンジニアが能力を発揮できないというのは、社会全体の損失にも繋がると思うので、そうしたことを防ぎたいと思っています。CTOが本来担うべきミッションを全うできるようにサポートするのが、「スポットCTO」の役割です。
─【松嶋】「スポットCTO」であれば、社内事情やサービスの詳細も把握した上でのアドバイスをもらえるし、悩みも相談できるということですね。
—【大芝】おっしゃる通りです。CTOとしてプロダクトを成功に導くためには、第三者の存在(顧客視点や各種利害関係者)が必要になってきますし、人に話すことで自分の思いや考えが整理できると思うので、私との面談をそういう機会にしていただけたらいいなと思っています。
私自身、マネジメントで苦労したことや失敗したこともあるので、CTOの悩みを理解した上で、経験に基づいた“芯を捉えたアドバイス”が出来ると自負しております。
優秀なエンジニアの離職を防ぐとともに、採用も支援する
─【松嶋】企業に対しては、どのような価値を提供できるのでしょうか?
—【大芝】企業が抱えているあらゆる悩みに対応可能です。中でも特徴的なものでいうと、エンジニアの採用支援や離職を防ぐことにも貢献しています。
エンジニアが退職する理由は人によってさまざまですが、多くのケースで共通するものでいうと、「正当に評価されていない」という思いを持っていることが原因だと思うんです。エンジニアの評価制度を設計するのは難しく、小さい組織だと制度自体を設けていない企業も珍しくありません。また、組織が大きくなるときには行動指針やビジョンが多少変わっていくと思うのですが、評価制度だけがアップデートされていないというのもよくあることなんですよ。そこで、評価制度の設計をサポートすることもしています。
─【松嶋】言われてみると、評価制度を上手に運用できている企業は多くないかもしれません。評価制度以外で退職に結びつく要因としては、何が考えられるのでしょう?
—【大芝】上長(直属の上司や更に上の技術責任者)に不満があるというケースもあるかもしれませんね。また、ビジネスサイドとエンジニアが上下関係になってしまっていて、社内受託のようになってしまっている場合も、退職につながりやすいと言えるのではないでしょうか。
─【松嶋】ビジネスサイドの立場が強くエンジニアの意見が反映されにくいというのも、転職理由としてよく聞きますね。
—【大芝】はい。転職市場における最近の傾向でいうと、「やりがい」を求めているエンジニアが多いように思います。コロナ禍で求人数が減った業界が多いものの、エンジニアは未だ超売り手市場が続いているので、他と比べて転職しやすい職種でもあるんですよね。
待遇面についても、コロナ禍以前であれば大手企業は福利厚生が整っているけれど働き方の自由度が低いというイメージがありましたが、最近はリモートワークやフルフレックスを導入している企業が増加しています。そうすると、企業を選ぶ上で「やりがいを感じられるかどうか」が重要になってくるんです。
スタートアップや知名度の低い企業の場合は、自社サービスの魅力を求職者にうまく伝えられていないケースも多いので、採用の難易度がコロナ禍以前より上がっている状況だとも言えます。私の場合は副業時代や「スポットCTO」として関わった企業において、何人もの採用をご支援してきているので、そういった面でも貢献することができます。
企業のあらゆる悩みに対し、包括的にサポートすることで、グロースに貢献する
スポットCTOでスキルをアウトソース
─【松嶋】「スポットCTO」は、CTOのみがサポートの対象になるのでしょうか?
—【大芝】いいえ。経営者、投資家、事業責任者、プロダクトオーナー、マネージャー、更にいうとメンバー層まで、あらゆる方が対象です。組織規模も1人~数百人まで対応可能で、特に制限は設けていません。
─【松嶋】なるほど。サービス内容について、改めて教えていただけますか?
—【大芝】CTO不在の場合は、スポットとして擬似的にCTO役を担い、CTOがいる企業に対しては、その人が成果を出せるようにサポートをする。CTOが取り掛かろうとしていることをヒアリングし、3ヶ月~半年後に発生しうる問題をあらかじめ想定して、解決策を提示するということもしています。先ほどもお話しした評価制度を作る際の支援はもちろん、エンジニアのスキルアップ支援やPM研修にも対応しています。
クライアントに求められている役割でいうと大きく3つあり、一つ目が口うるさいことを“あえて言う”顧問的なもの。二つ目は外部の知見を内部に持ち込むアドバイザーとしての役割です。三つ目はコンサルタントで、経営者などの意思決定に関わる部分にコミットして成果を出すことが求められます。
─【松嶋】ニーズに合わせて、都度役割を変えているということですね。
—【大芝】そうです。あえて顧問のように指摘することもあれば、アドバイザーとして必要とされている情報だけをシェアすることもありますし、採用を頑張りたいという企業に対しては、求職者の中から企業と相性の良さそうな人材を発掘し、スカウトメールを送ることもしています。
また、企業規模が成長するにつれて必要とされる役割は変わってくるので、顧問/アドバイザー/コンサルティングの3役が必要な場合の対応も可能です。その時々で柔軟に対応を変えていけるのは、「スポットCTO」の大きなメリットだと考えています。
─【松嶋】なるほど。採用が完了したらコンサルタントとしての役割は不要になりますが、「スポットCTO」であれば、顧問やアドバイザーとしても対応してくれるので、採用が完了したとしても新しく外部の人を探す必要がないと。
—【大芝】おっしゃる通りです。それぞれ別の人にお願いするよりも、総合的にサポートする人がいた方が、クライアントからしてもメリットが大きいと思うんです。都度説明する必要もないですし、成長過程を見ていて社内状況を把握している人の方が最適なアドバイスやサポートができますから。
─【松嶋】ありがとうございます。サービス導入の流れとしては、どのような感じなのでしょうか?
—【大芝】まずは会社のサイトからお問い合わせいただくか、60分のカジュアル面談を申し込んでいただき、そこで具体的なお話をお伺いします。契約となった場合には、週1回/月1回/隔週などのように、定期的に相談できる機会を設けて、課題解決を目指していくイメージです。
目安としては、プロダクトの立ち上げなどであれば週1回、組織の変革など大きな変更を加える場合は隔週、長期的な目線でサポートする場合は月1回というケースが多いですね。企業様の要望に対してミーティングの頻度は変わりますし、私一人ではなくパートナーとともにチームとして関わることもあります。
ビジネスとエンジニア、両方の視点をもち、多角的に企業をサポートする
─【松嶋】「スポットCTO」の特徴はどのようなところにあると思いますか?
—【大芝】先ほどお話したことと重複しますが、クライアントのニーズに合わせて役割を変えながら関わっていけるということが一つ。あとは、私自身がエンジニアリングとビジネスの両方に関する知識と経験を保有しているということですね。どちらも見れるという人はあまりいないので、そこで差別化できているのではないでしょうか。
技術についての知識があるので、プロダクト開発をアウトソースする際のベンダーを監査したり、技術を導入する際の選定でアドバイスしたりすることもできます。セキュリティ面で不安を感じている場合には、システムの監査もします。内製化チームを作っていきたいという希望があった場合は、組織の作り方やプロジェクトロードマップについてお伝えするようにしています。
「CTO候補がいるものの、まだ少しスキルや視座、あるいはマインドセットが足りないかもしれない」という相談があれば、その方のメンター役としてサポートし、社内のエンジニアリングチームと上手く連携が取れていないなどの組織的な問題についても解決に導くことができます。IPOの経験があるので、上場を控えているというところに対して経験者としてアドバイスもします。近年注目されている心の知能指数・EQ(※)を使ったカウンセリングができるのも、大きなポイントだと言えると思います。
※EQや関連サービスの詳細はこちら
─【松嶋】企業の課題については、大芝さんに相談すれば何かしらのヒントを得られるということですね。
—【大芝】そうですね。これまでご支援してきて強く感じたのは、企業は「経験豊富な有識者の意見を欲しがっている」ということなんですよ。そうなると、他社の事例をたくさん知っていて、かつ体験してきている人の意見というのは、全てのシーンにおいてとても重宝される。書籍などで勉強すれば知識を蓄えることはできますが、経験が備わっていないと机上の空論になりがちですし、他社で成功した事例をそのまま真似たとしても、その企業で成功するかどうかはわかりませんから。
知識を持っているだけではなく、実際の経験に基づいた知見を提供できるというところが、「スポットCTO」ひいては私の持っている1番の価値なんだろうと感じています。
─【松嶋】実際に「スポットCTO」を導入されたクライアントからは、どのような意見があるのでしょう?
—【大芝】CTOが不在の企業だと「どの技術を入れてどういう風にプロダクトを作っていけばいいのか、迷っていたところを支援してもらえた」と言っていただいたり「ベンダーに対して納得できておらず、相場もわかっていなかったけれど、監査してもらったことで最適な判断ができた」という声をいただいたりしています。CTOやエンジニアリングマネージャーを紹介したこともあり、その際にはとても喜んでいただけました。
CTOがいる企業の場合は「CTOが成長した」「プロダクトを成長させることができた」という声をいただくことが多いですね。
スタートアップ40代CEO
技術とビジネスのバランスがあるため話しやすい。草案しやすいし、同じ目線に立って話を聞いてくれている感じがする。ITベンチャー30代技術責任者
技術部門のトップという立場上、今後のキャリアや伸ばしていけば良い能力など、相談できる人がいないので助かる。スタートアップ30代CEO
新規事業としてぼんやりしたサービスのイメージがあったが、そこで立ち止まっていた。開発会社に発注するために、要件を整理して予算感の適正値と計画を立てていく部分で関わってもらった。背中をひと押ししてくれた感じがして安心できた。ITベンチャー40代CEO
エンジニアの退職が後を絶たなかったが、技術戦略や経営と技術部門の間に入り、お互いの意思を適切に伝えてくれたおかげで離職を食い止めることができたのでよかった。上場企業50代CTO
実際のユーザーの声一例
自分では意思決定できなかった大規模プロジェクトの実施に向けて、多様な経験からくるアドバイスが心強い存在でした。
組織規模やフェーズに関係なく、まずは問い合わせてみるところからスタート
企業の課題は、全て「人」に繋がる
─【松嶋】お話をお伺いしていると、大芝さんは「人」にフォーカスしているというか、「人と人の関係性」を良くするところに注力されているんだなと感じました。
—【大芝】そうですね。企業の代表に「何か困っていることはありますか?」と問いかけると、売り上げ、組織、急成長という3つの問題のどれかを挙げられることが多いんです。
その3つを紐解いていくと、さまざまな原因があるものの、最終的には「人」の問題に繋がります。そのため、各企業では定期的な1on1を行ったり、飲み会などで親睦を深めたりすることで、相互理解を深めて信頼関係を築いていこうとするケースが多いと思うんですよ。
でも、それって時間がかかることですし、本来であればプロダクトや事業を成長させることに時間を使いたいじゃないですか? 「スポットCTO」は、自社のサービスやプロダクトにかける時間を増やしたいという思いがベースにあるんです。
─【松嶋】先ほどもお話しされていた、本来担うべきミッションを全うできるようにサポートするというところですね。
—【大芝】はい。「スポットCTO」は、経験を積んでいくほど私の知見が広がるので、精度が上がっていくのが特徴です。利用していただくことで、クライアント同士でメリットが享受される。SaaSのようなサービスだと考えていただくと、わかりやすいのかもしれませんね。
小さな問題でも抱えているものがあれば相談を
─【松嶋】最後に読者へメッセージをいただけますか。
—【大芝】一部上場企業や成長中のベンチャーなど、組織の規模やフェーズに関係なく、さまざまな企業・個人を支援してきている実績があります。
私たちはクライアントの成長にコミットするプロとして仕事を全うするので、どんな小さな問題であっても、まずはご相談いただいて、お話しした上で導入するかどうかを考えていただけると嬉しいです。
─【松嶋】大芝さんの知識と経験があるからこそ、あらゆる課題に対応できるサービスなんですね。採用や社内制度に関する話については、重要だと理解していても実際に実現させるにはハードルが高いですし、そういった細部まで網羅的にカバーされているのは大きな魅力だと感じました。大芝さん、本日はお時間をいただきありがとうございました。
一方開発メンバーとは日々の技術的な課題に対してロジカルに問題発見をするプロセスを浸透いただきました。技術的なお強みに加え、EQのアプローチでメンバーそれぞれに内省する機会をいただき、組織力がアップする実感を持つことができました。
幅広い領域にご関心があり常に新しい挑戦をされているので、いつも組織に刺激を与えてくださっていました。長期間継続的にご支援いただきありがとうございました!