日本の食文化は世界的にも評価されており、東京は「ミシュランガイド」の星を獲得している飲食店が世界で一番多いと言われている。
ハイレベルな飲食店が多い一方で、薄利多売、長時間労働、低賃金、人材不足など、日本の飲食業界が多くの課題を抱えているのも事実だ。「安くておいしい」の裏側には、企業努力だけではない“誰かの犠牲”があるのかもしれない。
しかし近年は飲食業界の環境改善に努めている企業も増えてきており、東京と横浜でレストランを展開しているラックバックグループの斉田教継氏は、店舗スタッフの労働改革に注力している一人だ。また、同氏は2020年10月にPOSの売上データ分析ツール「TEAL BI」をリリースするなど、飲食業界のDXにも挑戦している。
今回は斉田氏を招いて、当事者として感じている飲食業界の課題や同プロダクトの開発経緯、今後のプランについてお伺いした。
30代以降で飲食業界に転身。新たな挑戦として辿り着いた、SaaSプロダクト開発
—【聞き手:松嶋、以下:松嶋】初めにご経歴をお話いただけますか。
—【話し手:斉田教継氏、以下:斉田】リゾートレストランを運営する株式会社ラックバックグループ(以下:ラックバッググループ)と、飲食店向け分析プロダクト「TEAL BI」の開発を担当している斉田教継と申します。
学卒後は産業機械メーカーに就職し、インド全土の市場開拓を担当していました。その後はドイツの機械メーカーの商社部門に転職。ヨーロッパのパッケージング業界における印刷機械など、さまざまな産業機械メーカーにおける日本の市場開拓を行っていました。
世界と比べて日本はフレキシブルパッケージ(軟包材)業界の印刷技術が独自路線でガラパゴス的だったため、ヨーロッパの最新の印刷技術を国内の大手印刷会社に伝えるような仕事もやっていましたね。専門書や専門誌での執筆もしていました。
30代に突入してからは外資系の大手保険会社に転職。金融や営業について学びました。
—【松嶋】今とは全く異なる仕事をされていたのですね。いつ独立されたのですか?
—【斉田】ラックバッググループを立ち上げたのは2007年です。以来、飲食業界の経営者として走り続けてきました。累計20店舗ほど出店するなど、経営は非常に順調だったのですが、コロナ禍で大きな影響を受けてしまったのです。
新たな挑戦として、飲食店のDX推進実現を目指して2020年に「TEAL BI」の開発を開始しました。
—【松嶋】「TEAL BI」とはどのようなプロダクトなのでしょうか?
—【斉田】飲食店の経営における売上やコストの管理、および分析ができるSaaSプロダクトです。飲食店を経営するためには、膨大なデータを分析する必要があります。しかし、データ取得は簡単ではない上に、分析するには多大な労力と時間をかける必要があるのです。
「TEAL BI」を使用すれば、そういった負担は軽減できます。一言で表すと、飲食店の経営力を強化するプロダクトですね。
飲食業界における常識を覆すとともに、組織構造に変革を起こす画期的なプロダクト
自身が持っていた課題感を解決するべく開発に挑戦
—【松嶋】「TEAL BI」が誕生したきっかけについて、詳しくお話いただけますか。
—【斉田】経営を続ける上で、試行錯誤を重ねてきました。その中で痛感したのは、仕事をする上で人が成長するためには、環境づくりが大切なのだということ。
飲食店の場合、料理人であれば料理をつくる技術、ホール側の人間であればサービス力を高めること、マネージャークラスであれば人材管理能力や育成スキルも求められます。しかし、飲食店の運営には非常に多くの雑務が付き纏うため、現場のスタッフが自己研鑽するための時間が足りていません。
—【松嶋】具体的にはどのような雑務が多いのでしょうか?
—【斉田】例えば「仕入れ」にまつわる業務だけで言っても、不足している食材の確認、予約状況などを考慮した上での発注、届いた食材の検品など……細かく言うと書ききれないほどの業務があるのです。
加えて飲食店のスタッフは人員の入れ替わりが激しく、新人教育の手間もかかります。さらにシフト制であるため、シフト作成や勤怠管理が複雑になりがちな点も雑務を増やしている要因の一つです。
しかし、運営コストがかかるからといって料理の価格を上げすぎるとお客さまが遠のいてしまいます。結果として、薄利多売に陥り、給与水準も低くなってしまうのです。
—【松嶋】特に日本は薄利多売の傾向が強いと聞きますね。
—【斉田】海外では地域ごとに可能な出店数が決まっていて、飲食店の開業が難しい国もあります。また、お酒の販売の規制が厳しいケースもありますが、日本にはそういった規制がありません。開業のハードルが非常に低く、ライバル店が続々とオープンするため、価格競争になりやすいのでしょう。そのほかにも理由はありますが、日本の飲食業界が多くの課題を抱えているのは紛れもない事実です。
飲食業に夢と情熱を持ってジョインする人が多いものの、実際は事務作業やパソコン作業のスキルを求められるといった点も、問題だと考えています。
飲食業界はピュアな気持ちで料理人やサービスマンを目指して入ってくる人が多いのですが、店舗の現場では多くの事務作業やパソコン作業をこなさなければならず、それらの作業が苦手な人は評価されづらいという傾向があります。さらにデータ管理や数値分析や業務は非効率的な場合が多く、優秀な人材ほど企業運営の現実を知って心が折れてしまう。この業界の環境下では成功するのは難しいと判断して、業界を去っていくケースも珍しくありません。
優秀な若者が次々と去っていく業界が成長するはずがありませんし、こういった状況をなんとかしなければなりません。
—【松嶋】そのほかに、課題に感じているものがあればお話いただけますか。
—【斉田】売り上げに対する分析モデルが確立していない点についても課題を感じています。既存ツールには多くの帳票はあるのですが、分析はExcelを使って自分でするしかありません。「ないのであれば自分でつくろう」と思い、開発してできたのが「TEAL BI」です。
もともとラックバックグループでは、原価と人件費は月次管理をしていました。毎月月末締めで、翌月20日頃に結果が出てきたあとに、店長会議で話し合いをします。「なぜ先月の人件費や原価率がオーバーしたのか?」と詳細を問い詰めても、店長やシェフは1ヶ月近く前のことなど覚えていません。そこから「じゃあ次月から頑張ろう!」とやっていては、年に5回しかPDCAは回せませんよね。そんな改善をしていて、人件費も原価率も合わせられるわけがないのです。
そこでアメーバ経営の考え方を取り入れ、日次管理表とグラフをExcelで作成し、運用し始めました。その結果、日々直近の人件費や原価の妥当化を確認でき、毎日修正できるため、簡単に改善できるようになったのです。さらに、店舗ごとに最適な原価と人件費をこまめに見直すこともできるようになりました。同じ業態でも地域や利用目的によっては、理想的な人件費率や原価率は微妙に異なるものです。
しかし、とても便利なものではあったのですが、運用する際のExcel作業が非常に大変でした。そのため、「TEAL BI」では、ラックバックグループで行っている日次管理を全自動で表示できるようにしています。
「現場」「経営」「データ分析」、3つの軸を備えた唯一無二のプロダクト
—【松嶋】課題を把握していると言っても、プロダクト開発は大変だったのではないですか?
—【斉田】私はオタク気質なところがあるのか、自身の興味があることを調べたり勉強したりするのは苦ではありませんでした。また、私一人で開発していたわけではなく、エンジニアや飲食業界のマーケターなど、各専門家の方にもご協力いただいています。
ただ、開発を進める中で強く感じたのは、飲食業界はデータ量が莫大にあり、かつ複雑なのだということ。多くの飲食店ではPOSレジが導入されています。非常に便利なツールですが、メーカーごとにデータ構造や集計のルールが全く異なるのです。協力していただいているエンジニアも苦戦していましたね。異なるデータフォーマットを持つPOSレジのデータを共通化し分析するのは、非常に難しい作業なのだと実感しました。
—【松嶋】飲食店のオペレーションが理解できていないと、ロジックを組むことはできませんしね。
—【斉田】ええ。また、飲食業界での経営経験がない人が開発しようとした場合、関係者にヒアリングしながら要件定義するしかありません。ただ、現場の人の意見はその人の部門ごとに部分最適になりがちで、全体感を持った高い視座で抽象化と標準化をするのは難しいものです。一方で外部コンサルタントは、抽象化と標準化は得意でも現場の必要性を把握できていません。このギャップが埋まっていないため、要件定義が困難になるのです。
現場・経営・データ分析、これら3軸がセットになっていなければ、要件定義はできません。私がヒアリングする場合は、関係者の意見を取捨選択し、本当に必要なものを見極めるようにしています。こういった判断は飲食店の経営経験がないと難しいでしょうね。
—【松嶋】「TEAL BI」は、さまざまな経験・知識がある斉田さんだからこそ、開発できたものなのだと思いました。
—【斉田】ありがとうございます。私は現会長の河本とラックバックグループを創業するまで、飲食店経営をしたことはありませんでした。しかし、未開の市場を開拓をした経験と金融知識があったため、それらを活かして飲食業界の常識に囚われることなくレストラン経営をすることができたのだと思います。
ティール組織を浸透させ、飲食業界をアップデート
—【松嶋】「TEAL BI」で解決したい課題についてお話しいただけますか。
—【斉田】飲食業界の組織構造を変革したいと考えていて、社名であるティールテクノロジーズのティールは、「ティール組織」を意味しています。
飲食業界は古くからトップダウン経営が多い印象です。時代の変化がゆっくりだった時代は、トップダウンによって均一で統一したフォーマットで複数店舗を管理していれば十分でした。
しかし、今はニーズの変化も早くなり、地域ごと立地ごとにニーズが多様化しています。さらに、コロナの影響もあり、地域ごとに突発的な変化が日々起きています。そのような中では、店舗ごと(現場ごと)に自ら判断をして、敏速で細かな変化に合わせた対応をしていかないと追いつきません。
—【松嶋】トップダウン経営では、生き残ることが難しくなっていくと。
—【斉田】ええ。ビジネスとして成功させるためには、データをもとに戦略を立てなくてはいけません。現場の肌感も大切でしょう。しかし、データは経営陣に集まりやすいため、現場を理解していない人がデータに基づいて施策を考えて指示を出しても、実際は「ハズしている」ことが多いものです。毎日店舗の現場に立っているスタッフからすると、実態とかけ離れた的外れな指示は、ピンときません。それではPDCAは回せませんし、スタッフのモチベーションも下がります。
大切なのは、「データ」と「現場の肌感」の両方を持っていること。つまりは、現場でデータを基に自ら状況判断をして、スピーディに改善PDCAを回した方がよっぽど的確です。しかし、ただデータを渡すだけでは問題は解決しません。
ラックバックグループで起きた事例をお話しすると、そもそも多くの売上データ管理のツールはパソコンで運用しています。現場にパソコンを渡したところ、バックヤードで分析作業に注力する店長が出てきてしまいました。現場スタッフからすると、その姿は「店長が現場に背を向けている」ように見えてしまい、チームの士気が下がってしまったのです。データ分析を熱心に頑張ってくれる店長がいる店舗ほど、その傾向が強くなってしまったのは盲点でした。
—【松嶋】店長はお店を盛り上げたい一心なのにも関わらず、スタッフとのすれ違いが起きてしまったのですね。
—【斉田】まさに「行動が裏目に出てしまった状態」ですね。
パソコン作業が苦手でも、現場と真摯に向き合っている店長は、チームビルディングが上手です。私はそういった店長こそ、データを武器により活躍して輝いてほしいと考えています。“パソコンが得意な人”ではなく、“情熱を持った人”が出世できる業界になって欲しいのです。
—【松嶋】「TEAL BI」を使えば、“パソコンが得意な人”でなく、“情熱を持った人”がデータを分析できるようになるのですね。
—【斉田】はい。パソコンが苦手な人でも扱えるようにするため、「TEAL BI」はスマートフォンやタブレットで直感的に、簡単に分析できるようにしています。
経営陣から店舗の現場に対して、「なぜ売上が下がっているのか?」と聞いても、体感をベースにした回答が返ってくることがよくあります。しかし、データを基にしていない分析は、にわかに信じがたいものです。一方で、経営陣がデータだけを見て、店舗の売上不信の原因を正しく読み解くことはできません。つまり、根本原因は「現場のみぞ知る」です。結局は現場の肌感がないと根本原因の特定は難しく、データがないと正確な原因と結果の紐づけもできません。
現場がデータを簡単に分析することができれば、分析の作業に時間をとられず、売上を向上するための施策を考える事にフォーカスできるようになるはずです。
膨大なデータ分析もお任せあれ。 「TEAL BI」は飲食店経営の心強いパートナー
詳細な分析も可能! UI/UXにこだわり設計された、自慢のプロダクト
—【松嶋】最初にセットアップ方法について、簡単にご説明ください。
—【斉田】セットアップは非常に簡単です。
POSレジやシフト勤怠システム、発注仕入れシステムと連携させるだけで大丈夫ですし、お客さま自身で簡単に各ツールのアカウントと紐付けできるようにしました。ただ、設定に苦手意識のある方もいらっしゃると思いますので、最初は私がセットアップするようにしています。初期費用はいただいておりません。
—【松嶋】実際の機能についてもお教えいただけますか。
—【斉田】大きく分けて「速報」「店長ダッシュボード」「売上分析BI」「ABC分析」といった4つの機能を備えています。
「速報」では、昨日の各店舗の売上の各数値の速報や、人件費や原価率の今月の進捗、売上の予実の進捗などが確認できます。昨日の30分毎の座席の稼働率も見ることができます。
「店長ダッシュボード」では、店舗単位での昨日の売上、目標に対する今月の進捗を確認できるようにしています。また、仕入れ・人件費の進捗も確認できますね。なお、データの入力は不要で、POSレジ、インフォマート、JOBCAN勤怠のデータが毎日自動的に「TEAL BI」に反映されます。
基本的には全てグラフで見れるようにしているのもポイントですね。時間帯ごとの人数や客単価も確認できますし、パッと見ただけで「ランチで集客できている」「14時以降の来店は単価が高い」といった傾向がわかるようになるため、施策が打ちやすくなるのです。
—【松嶋】そういったデータをExcelで集計し、グラフ化していたらかなりの手間がかかりますね。
—【斉田】非常に大変でしたね(苦笑)。Excelでもある程度自動化できますが、設定が大変ですし、これだけ多くのデータを取り込むと、フリーズしてしまうのです。
また、Excelに馴染みのない人からすると、非常に難易度の高い作業となります。現場レベルに落とし込んで使用してもらうためには、シンプルかつ直感的に操作できるようなプロダクトにする必要がありました。
—【松嶋】ユーザー側で特別なことをしなくとも、自動でデータが更新され、グラフ化までしてくれると。
──【斉田】ええ。また、「売上分析BI」では、数年前の売上データとも比較できます。週次や月次の推移も表示可能です。数字を追うのは非常に手間のかかることですし、ただ売上金額を見ていてもわかりにくいでしょう。グラフにして、見せることが重要だと考えています。
—【松嶋】「ABC分析」ではどのようなことができるのですか?
—【斉田】「売上分析BI」では確認できなかった、メニューごとの売上変動などを確認できるものです。
コロナによる影響や深夜帯の営業時間の規制などもあり、外食に対する消費者の行動が変化しました。それにより、メニューの大分類や中分類別での売上のバランスが大きく変化しています。例えば、アルコール類の販売比率が下がったとか、ディナー時間帯よりもランチ時間帯のほうが売上も客単価も伸びているとか。そういった背景があることから、コロナ前に設定した理論原価は、今のタイミングでは合わなくなっています。
そのため、「メニュー分類別に販売比率がどのように変化してきたのか?」「変化していくのか?」を追いかけて、理論原価がアップダウンするのを見ながら、メニュー改変のタイミングで再調整する必要がある。こういった部分がグラフで簡単に見られるようになっています。これらの分析は、データが膨大すぎてExcelでは絶対不可能ですね。
—【松嶋】なるほど。他にはどのような機能があるのでしょうか?
—【斉田】系列店同士で、店舗間の比較もできるようにしています。
売上、客数、1席あたり売上、1坪あたり売上、客単価など、多くの項目でランキングを出せるようにしています。これは売上の高い店が偉いということではなく、店舗ごとに特色がある事を皆さんで共有してもらうことが目的です。比較することで「自分たちの得意な分野でNo.1を目指そう」と、店舗スタッフのモチベーションにもつなげられるといいなと考えています。ランキングの種類は、今後増やす予定です。
また、社内の店舗間での比較分析にも力を入れています。同じ業態でもエリアや立地によって、さまざまな強みや弱みが出るものです。他の店舗の強みを自店舗に活かせないか?売上が伸ばせず苦しんでいる店はないか?といったことが見出しやすくなってます。それにより、うまくいっている店が低迷している店の再起を手伝ったり、低迷してる店の責任者がうまくいってる店に助けを求めたりすることもしやすくなるのではないかと。
飲食企業は店舗数が増えて成長するにつれて本部に情報を集め始めるのですが、そうすると店舗同士での情報の行き来が少なくなり、店舗単位では情報過疎が起き始めます。結果として、会社としての重要なノウハウは店舗単位で分散し、店舗が孤立してしまう。そして中間管理職が多くなり、官僚的になり、意思の上意下達が伝言ゲームになっていきます。このように店舗数が増えると、さまざまな弊害が起き始めるのです。
店舗数が増えるほど、各店舗にそれぞれの強みやノウハウが蓄積していくでしょう。しかし、「TEAL BI」を導入いただくことで、そういった情報を全員が共有できれば相互扶助が可能になりますし、脳のシナプスとニューロンのように、店舗同士で情報のやりとりができるようになれば、飲食企業はどんどん強くなると考えています。
プロダクトを通して、店舗に対する解像度の向上にも貢献
—【松嶋】「TEAL BI」を導入する上で、コンサルティングもされているとお聞きしました。
—【斉田】コンサルティングというと大袈裟かもしれませんが、自身でも飲食店を経営していますので、お客さまの相談に乗ることはありますね。
社内の情報共有の仕組みが脆弱な企業の場合、「TEAL BI」の導入よりも社内SNSツールの導入を薦めることもあります。
—【松嶋】プロダクトの提供だけでなく、経営の相談にも乗ってもらえるのは嬉しいですよね。
—【斉田】経営者同士、似たような悩みを抱えていることが多いですからね。「飲食業界をよくしていきたい」といった思いは共通だと思いますし、私でお役に立てることであればお話できればと思います。
—【松嶋】頼もしいですね。「TEAL BI」を導入いただいたお客さまからは、どのようなお声をいただくことが多いのですか?
—【斉田】まずは上層部の方々に導入いただいていて、ある程度使いこなせるようになってから、徐々に店舗の現場の方々への導入を進めて頂いています。実際に導入いただいた方からは「一度見始めると止まらなくなる」と嬉しいお声をいただいていますね。
—【松嶋】「TEAL BI」の分析によって、今までわからなかったことが解明される感覚なのでしょうね。
—【斉田】ご用意している分析のグラフの種類は非常に多様で、これまでご覧になったことのない角度の分析もあるでしょうね。さらにソートをかければ深堀して分析することができますし、流し見(サーフィン)しているだけで、これまで把握できていなかった新たな気づきが得られると思います。
—【松嶋】「TEAL BI」を通して、自分自身の店舗に対する解像度が上がっているのですね。
—【斉田】おっしゃる通りです。
「TEAL BI」を開発したことで、作る前に私がやっていたような、Excelでグラフを作る作業は、本当の意味での分析ではなかったのだと実感しています。店舗で起きていた事象について、自分なりに想像で仮説を立て、それを立証するためにグラフを作っていたにすぎなかったのだと。想像が外れていたら、グラフは捨て、当たっていたらこれみよがしに皆にシェアをするなんてことをしていました。そんなことをやっていても、一生自分の想定内のことしか発見できませんよね。この分析ツールの価値は、自分の想定していなかった発見が得られることだと思います。
また、最近は「こういう角度でも分析したい」「〇〇のデータも取得できると嬉しい」など、アイデアも多くいただいていて、非常に嬉しいです。私が思いつかなかったような意見をいただけることも多いですし、お客さまが増えるたびに、プロダクトがよりよくなっていっていると感じます。
過去分析~未来予測まで、完全無欠のプロダクトを目指し開発はつづく
更なるグロースを目指し、追加機能も検討中
—【松嶋】今後は追加機能なども検討されているのでしょうか?
—【斉田】将来的には広告やマーケティングなど、飲食店経営に関する全てを管理できるプロダクトにしたいですね。
具体的に考えているものとしては、Google Business Profile(旧:Google My Business)やInstagramなどとの連携です。これまでの飲食業界はグルメ広告媒体をメインに利用していて、マスに対してアプローチしていました。しかし、現在はGoogleやSNSをいかに活用するかに注目が集まっています。ロイヤルカスタマーを育てていくためには、より自分たちの店の特徴とマッチした個人に対してのOne to Oneマーケティングが重要になってきています。
—【松嶋】Google Business Profileを活用するためのツールも登場してきているのだとか。
—【斉田】ええ。しかし、そういったツールは売上と掛け合わせた分析はできません。これまで飲食業界では、ネット上での販促などの施策の効果測定に関しては、アクセス数の増加などはわかっても、具体的にいくら売上伸びたか?などの具体的な効果測定はできていませんでした。私たちが現在取得しているPOSの売上データとGoogle上でのアクセスデータを掛け合わせれば、ネット上の施策の効果検証がよりデータドリブンになります。
加えて、気象データも重要ですね。日照時間や降雨量、気温が売上に対してどのような影響を与えているのか、そういった分析を進める必要があります。さらには人流データも連動する予定です。その他の多くの外部データを組み合わせ、売上との因果関係を店舗個別単位で十分に分析すれば、未来予測も自ずとできるようになると考えています。
大手企業との競争に勝つためのポイントは“単純作業の自動化”
—【松嶋】最後に読者に向けてメッセージをお願いできますか。
—【斉田】これまでの飲食店経営は、作業に追われるばかりだったと思います。忙しいことが当たり前であり、仕方ないと諦めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、「TEAL BI」はデータの集計、管理、分析にかかっていたExcel作業を削減することで、“未来のことを考える時間”を増やすことができます。今まで見えていなかったデータを認識することで、新たな発想も生まれてくるでしょう。
飲食業界に多い中小零細企業は、大手企業と比べてコストカットできる部分も限られていて、一人当たりの作業量が多く大きな負担となっています。小さい企業であるほど、作業単価の安い単純労働作業をできるだけ自動化をしていけば、単価の高い頭脳労働に人材を集約することができます。そうすることで、大手企業にでも十分に太刀打ちできるようになるはず。
飲食店のやるべき仕事とは、Excelを使ってデータ集計をして分析グラフを作る事ではなく、分析グラフを見て変化を読み解き、改善の施策を考え、PDCAを回していく事です。それが本来の仕事のはずです。
100店舗あれば100通りの経営方法、勝負の仕方があります。自分の店の強み・弱みを把握するためには、まずはデータを分析して検証を繰り返すしかありません。飲食業界が好きで、この業界で働くことに誇りを持っている方にこそ、ぜひ「TEAL BI」をご活用いただければ幸いです。
導入することで、累積グラフというものはあまり使っていなかったが、リアルタイムに反映させながら累積グラフをみると右上がりの角度による伸びや廃れがわかるようになり商品の改廃の判断がやりやすくなりました。
今後さらにワクワクするような他システムとの連携や面白いアイデアを追加して欲しいです。